パン・ド・ミとハードトースト、その違いは?
日本で最もたくさん作られているパンといえば食パンだ。ただし、これにあたる外国語はない。つまり日本の独特の主食用パンである「食パン」は、日本の造語なのだ。
定義も「食パン型に入れて焼いたもの」ということ以外、内容については特に決まりはない。
ドンクの店で「食パン」とは「パン・ド・ミ」の名前で売られているものをさす。
パン・ド・ミのミ(Mie)とはフランス語で中身のことで、皮を食べるバゲットに対して、「中身を食べるパン」という意味でこの名前がついている。
通常は、食パン型に生地を入れたら、蓋をしてきっちり直方体に焼き上げる「角食」が多いが、蓋をはずして山形に膨らませ、「山形食パン」にすることもある。
ドンクの食パン「パン・ド・ミ」は、しっとりとしていて口どけのやわらかいのはもちろんだが、ほんのりとした甘みと香りがいいのも自慢の一つ。
一方、これとよく比較されるのが、「ハードトースト」だ。
形だけ見たお客様からは「いったい、どう違うんですか?」と聞かれるが、こちらは一言で言えば「フランスパンのような食パン」だ。
つまり、「パン・ド・ミ」をはじめ一般に食パンには砂糖や油脂を入れるが、「ハード・トースト」は小麦粉とイースト、塩、水だけといった、フランスパンと同じ材料構成の生地を、食パン型に入れて焼いたものなのだ。
ただし、生地を食パンのようにぐっと立ち上がらせるために、小麦粉はフランスパンよりさらにグルテンの多い最強力粉に置き換えている。
細長いバゲットより、中身の多いバタールが人気の日本で生まれた、フランスパンの中身が好きな人のための食パン。あっさりとした塩味で、トーストするとパリッとする食感が受け、幅広いファンに支持されている。
昭和58(1983)年に当時のドンク社員、井上康治が作り上げたレシピだが、ドンクの定番アイテムにはこうした研究熱心な技術者が生み出した財産が数多くある。